『ストレスと音楽』 健康メモより
音楽が私たちの健康に役立っていることをご存じですか。

今からおよそ三千年前にダビデの奏でるハープの調べがユダヤ王サウルのうつ病を治したという有名な逸話があります。

紀元前五世紀から四世紀の古代ギリシャでは、ピタゴラス、アリストテレス等の賢人が音楽は聴く人の魂を動かすと考え、魂のカタルシス(浄化)として用いるようになりました。
カタルシスとは、もともと排便、排出といった意味で、精神のひだにたまった苦悩を洗い流すという意味です。
アリストテレスは、音楽によって精神のカタルシスを得る方法として、悲しいときは悲しみから始め、悲しみに共鳴して悲しさを吐き出させてから明るい世界へ入っていくことによって精神のバランスがとれるのだといっています。

その後、十九世紀、アルトシュラー博士は、音楽には、新陳代謝および発汗、血圧、脈拍、内分泌、筋肉エネルギーに変化をもたらす力、注意を集中したり、範囲を増大する力、病的状態から健康な感情と思考に交替させる力、気分を変える力などがあると分析しています。

二十世紀に入り、アメリカでは音楽を治療法として体系化、組織化し一九五〇年全米音楽療法協会を設立し音楽療法士の資格認定も行うようになりましたが、日本では、一九八六年に日本バイオミュージック研究会が設立されましたが音楽療法士はまだ制度化されていません。
病的なレベルのかたを音楽のみで治療することは、危険で軽率ですが、まずまず健康なかたが心身の健康を保つために音楽を楽しみ利用することは大いに意義のあることと思われます。

ちなみに、一九五四年アメリカのボドルスキーの研究によりますと、憂うつなときにはバッハのフランデルブルグ協奏曲第二番など、イライラや不快な気分のときにはショパンの夜想曲などが良いと示されていますが、効果がでない場合は医師にご相談ください。
(1999.6)


茨木市医師会 渡辺 洋一郎